最強の英語学習法「音読」の授業導入例
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音読は英語学習においても広く使われている学習方法の一つです。その効果は、リスニング、ボキャブラリー、グラマーから、リーディングまで多くのスキルに効果があると言われています。この記事では、音読練習をどのようにクラスに導入することが出来るのか、具体的なステップと導入例、オススメの教材のポイントなどを紹介します。
音読とはなにか?
音読は、オーバーラッピング、シャドウウィングなどのアクティビティを含む、ステップのある一貫した学習方法の一つです。音読は特にPhonemic Awareness(音韻的意識)を効果的に向上することにつながると言われています。
Phonemic Awarenessは、シンプルに言うと、文字と音のつながりのことを指します。例えば、’ph’ という音が /f/の音に対応しているということや、 ’elephant’という組み合わせが、/élɪf(ə)nt/という音になるということを知っていることを指します。その知識があることにより、英語の音を聞き分けられることに繋がり、結果的にリスニング力や、その他のスキルの向上につながると示唆されています。
そのような音読ですが、授業においても導入可能で、一つのアクティビティとしてのプライミング(準備段階)から、一つの教材を使い一つクラス全体を音読の授業にすることなども可能です。ここからは音読に使える教材のポイント、一つ一つのステップを具体例と共に説明していきます。ちなみに、見出しの(○回)はそのアクティビティを行う回数の参考数となります。
音読指導のステップ
音読のステップは以下の7つがあります。
(1) ただ聞く
(2) スクリプトを読みながら一緒に聞く
(3) 1行ずつ語彙・文法、発音、内容の確認
(4) オーバーラッピング
(5) シャドーウィング
(6) 音源を聞かずに音読
(7) リスニング
少し多いですが一つずつ見ていきましょう。
ステップ1:ただ聞く(2回)
最初のステップはスクリプトを読まずに音そのものに集中し、どれくらい理解できたかを確認する段階になります。流れとしては、音源を流す→内容確認の質問、を2回繰り返します。(場合により1回でも構いません)
導入としては、「これから〇〇についての文章を聞きます。どのような内容なのか、どのような単語が聞こえてきたのかを意識しながら聞きましょう。」などでよいと思います。
聞いたあとは、クラス全体か個人に、「どのような内容でしたか?」「どのような単語が聞こえましたか?」「〇〇という単語はどういった意味ですか?」など内容確認として聞いていきます。必要であれば2回目を聞いて同じプロセスを繰り返します。
ノートテーキングに関してですが、ノートを取らせるのは先生が決めてしまってよいかなと思います。私は「ノートを取りたい方は取っていただいて構いません」程度に伝えています。
ステップ2:聞きながらスクリプトを読む(1回)
次のステップでは、スクリプトを見ながら目で追いながら聞く、俗に言うアイシャドウィングを行います。導入としては、「スクリプトと一緒にどのような内容が書いてあるのかを目で追いながら確認しましょう。声に出さなくても大丈夫です」などと言うことが出来ると思います。
ステップ3:1行ずつ語彙・文法・発音・内容を確認(1回)
次のステップは一行ずつ語彙・文法・発音・内容を確認していくステップになります。このステップを通して、ボトムアップ処理(文法、単語、音を理解して文章を理解すること)と、トップダウン処理(知識やスキーマを用いて理解すること)どちらも強化することが出来ます。
やり方としては、①先生が読む(もしくは音源を流す)→②生徒がリピート→③その文についての解説、という流れで行います。
解説に関しては、文法、語彙、発音(繋がりも含む)、内容を中心に見ていきます。例えば、“Could you do me a favor?”という文章があったとします。
この文章では、文法に関しては、could you ~という依頼表現を説明することができるでしょう。ここで、can you との違いや、他の助動詞表現も軽く触れることが出来るでしょう。
語彙では、favorなどが説明できそうですね。Favorのこの場合だと「お願い」という意味だけではなく、その他の表現 “show favor to A”「Aにえこひいきする」や “return a favor”「親切を受けたお返しをする」など新しい表現なども紹介できます。また、派生語であるfavoriteなどについても紹介することでこの語に対する理解度を促すことにつながるでしょう。
発音に関しても、上がり口調になることや、could youの音が繋がり(/kʊdju/)も指摘することが出来ます。
最後に内容に関しては、これは例えば時事問題に関するものや、環境問題に関する教材を使用した場合には、取り上げた問題の背景知識を説明することも可能です。
このように一つの文章でも、文法、語彙、発音、内容という4つのポイントを意識することで様々な角度から英文を理解することにつながります。
ステップ4:オーバーラッピング(3回以上)
次のステップは、オーバーラッピングです。オーバーラッピングとはスクリプトを見ながら、音源にかぶせるように読む練習のことをさします。ここでは、音源を1行1行止めずに、最初から最後まで止めずに行うことです。この作業は少なくとも3回は繰り返しましょう。
ここでのポイントは、できる限り音源と同じ速さ、発音、イントネーションで読めることです。もちろん完璧に同じにするということは非ネイティブなので不可能でありそれが目的ではありませんが、真似をすることで英語の速度、つながり、イントネーションなども一緒に学ぶことができます。そして音源と同じ速さで理解をしながら一緒に読めることは英語の処理速度の向上につながります。
導入としては、「これからオーバーラッピングを行います。スクリプトを見ながらで大丈夫なので、音源に被せるように一緒に読んでいきましょう」などで良いかと思います。
そして回数を重ねるごとに、毎回意識するポイントを変化させるのも重要です。例えば、「ここではイントネーションを意識しながら行いましょう」「今回は意味も考えながら行いましょう」などと意識するポイントを説明することで、ただリピートするだけの状態を避けることにつながります。
また、生徒の様子を見て、言い辛そうだなという箇所があれば、その苦手な箇所をピックアップして、リピート練習などを適宜行います。
ステップ5:シャドーウィング(3回以上)
次のステップはシャドーウィングです。シャドーウィングはオーバーラッピングとは違い、スクリプトを見ずに、聞いた音をリピートすることを指します。このプロセスは音と内容を理解し、それを頭の中で一瞬保持して口に出す作業になるので、認知的負荷がかかります。しかし、この作業をすることで、音と内容に注意を割くことを促すため、英語力向上に効果があります。
オーバーラッピング同様、シャドーウィングも少なくとも3回は繰り返し行いましょう。また、シャドーウィングが難しいと感じたら、オーバーラッピングに戻ることもOKです。
意識するポイントはオーバーラッピングと一緒なのでここでは省略します。
ステップ6:音源を聞かずに音読(3回以上)
このステップでは、音源を聞かずに音源と同じように読むことができるように練習します。これも少なくとも3回は繰り返します。
ここでのポイントは、音読にバリエーションをつけることです。バリエーションとしては
1.普通に読む
2.意味を意識しながら読む
3.日本語訳をみてそれを英語に変えて読むクイックトランスレーション
4.文章の最初の数文字だけを見て顔を上げて読む音読(覚えるため)
5.ゆっくりで良いので噛まずに正確に読む
などがあります。毎回の音読をする際にも、生徒の状態をみて臨機応変に指示をします。
また、音読ではクラス全体で読む音読、まとまった時間を取り個々の練習時間とする、などがありますが、これもクラスの状況次第で臨機応変に対応していくのがよいかと思います。
ステップ7:リスニング(1回)
これが最後のステップになります。ここでは何もスクリプトを読まずに、声も出さずに、音だけに集中をして、どれくらい聞き取れるようになったのかを確認します。ステップ1で聞いたときに比べてどれくらい聞き取れるようになったのかを生徒に聞いてみましょう。「最初に聞いたときに比べほぼすべての生徒がよりはっきりと聞こえるようになった」、「以前よりちゃんと理解出来るようになった」などと答えると思います。
音読のクラスでの使用例
ここでは、どのようなときに音読を導入できるのかいくつかのパターンをご紹介いたします。
パターン1:音読練習を徹底的に行う音読クラス
1クラス50分間の授業であれば、すべてのクラスを音読にすることも可能です。確かにこれだけに時間を使ったら時間がもったいないと思う方もいるかも知れませんが、私の働く英会話教室では50分の音読の授業を行った際にも好評でリピート者が多くいます。
パターン2:リスニングのクラスでの練習のパートに使う
例えば、リスニングのアクティビティを行ったあとに、答えの確認後の練習として音読を利用することができます。そうすることで、リスニング教材の理解を深めることができ、最初に聞いたときに比べ練習後に聞き取れると自己効力感(自分が出来るという自信)の向上にもつながるでしょう。
パターン3:導入としての音読
音読はまた、アーティクルを使い、その内容についてディスカッションを行う前などの場合に、導入として練習をすることで、内容理解を促すことができます。これをすることで、ディスカッションにおいて、内容理解ではなく、自分の意見を言うことにフォーカスを当てることにつながります。
音読におすすめの教材のポイント
さて、今まで音読のステップと音読の使用例を見てきましたが、具体的な教材は想定せずに枠組みだけを説明しました。その理由は、どの教材もポイントさえ整っていれば音読教材になりうるからです。それらのポイントを今から見ていきましょう。
音読教材のポイント1:スクリプトがある
スクリプトは必須です。これがなければ、内容確認が出来ませんし、内容が聞き取れたとしても、細かい文法(例えば冠詞など)は聞き取ることができないということにもつながる可能性があります。
音読教材のポイント2:日本語訳がついている
これは、絶対というポイントではないですが、日本語訳がついていると、意味の確認、クイックトランスレーションをする際に使えます。
音読教材のポイント3:ある程度まとまりがある
1行だけの音読も効果がないわけではもちろんありませんが、30秒以上のものなど、なるべくまとまった英文のものがおすすめです。理由としては、英語を聞き取るときの耐久力にもつながりますし、英語での論理的な話の展開なども学ぶことが出来るからです。
音読におすすめの教材―具体例―
ここではどんなものが教材として使えるのか具体例も見ていきましょう。
音読教材具体例1:英語資格試験のリスニングパート
英検やTOEICなどの英語資格試験の問題集には、必ずと言っていいほどスクリプトと日本語訳がついています。それらを教材として使うことは、その試験の対策にもつながるので一石二鳥です。
音読教材具体例2:映画やドラマ
音読の教材は映画やドラマでも構いません。すべて音読練習をするのは時間の関係上難しいと思うので、1分くらいのシーンを切り取って使うなど、工夫をして使うことができます。その時は面倒ですが、セリフを準備する必要があります。ですが、インターネットなどにも(映画名) transcript」などと調べれば意外と出てきます。それをコピーすれば効率的に準備することができます。
音読教材具体例3:一般の英語学習教材・教科書
一般の英語学習教材や、教科書ももちろん音読教材として使うことができます。
参考程度にですが、筆者はCNN English Express(書店、Amazonなどで購入可能です)という学習教材を使っています。このシリーズは実際のCNNのニュースを取り上げ、スクリプト、日本語訳、解説なども含まれている月刊の英語学習用雑誌です。レベル的には中級者以上の方にオススメですが、専用のアプリ(無料)では、速度調整なども出来る(0.5~2.0倍)ので、初級者の方でも十分利用することができます。
「音読」の授業導入例 まとめ
しっかりとしたステップを踏むことで効果が顕著に出るのが音読です。ステップはたくさんあるので、ここでもう一度おさらいしましょう。
1. ただ聞く
2. スクリプトを読みながら一緒に聞く
3. 語彙・文法を確認
4. オーバーラッピング
5. シャドーウィング
6. 音源を聞かずに音読
7. リスニング
8. 暗唱、クイックトランスレーション
授業においても導入可能なので、使えそうだなと思ったらぜひ使ってみてください!