添削少なめ/インタラクティブな英作文指導法と注意点
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グローバル化が急速に進んでいる現代社会では「書く」スキルは大変重要です。
ビジネスシーンではメールやチャットで英文を書く機会が急増していますし、英語学習の低年齢化を背景に、小学生でも英作文に取り組む子どもたちが増えています。
英検では3級から英作文が必須になっていますので、英検受験を考えている子どもたちは、きちんとした英文を自分で書く力をつけなくてはなりません。
「書く」というのは英語4技能の中で最も難度が高いものですが、それだけに書くことに慣れれば英語に自信が生まれます。
ですが、「書くことの指導」には幅広いスキルが求められます。
どのように指導していけばいいでしょうか。
英作文の指導=添削?
英作文の指導と聞くと、「添削」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
「添削」を次のステップにつなげてスキルアップできる学習者ばかりならいいのですが、実際には「添削してもらったら、そのまま」とう学習者も多くいます。
先生にとっては頭が痛いところです。
また、「添削」という指導スタイル自体が「もぐらたたき」のようなもの。
提出される英作文は、添削しても添削しても指摘するべきミスは消えないことが多く、きりがありません。
そして先生は細かい作業に膨大な時間を費やすことになります。
そこで、「添削」のみで終わらず、効率的で効果が上がる英作文の指導方法や注意点・工夫点をご紹介します。
英作文指導法(1) 日記を使う
日常的なテーマで書けるので、英作文を続ける学習法として「日記」は人気です。
難点は内容にバリエーションが出にくく、決まった表現に終始しがちであることです。
また、びっくりするような不自然な表現をどこかで見つけてきて日記に書いているパターンもあり、添削にひと苦労することになります。ここで、先生のひと工夫が必要となります。
トピックを提示する
課題として日記を出している場合、”family” “pet” ”music”など、トピックを提示し、それにまつわる日記になるように提案します。
使える表現を事前にブレインストーミングする
グループレッスンであれば特に有効なのがブレインストーミング。
みんなでそのテーマで使えそうな表現を考え、ボードなどに書き出します。
それらの表現は使わなくても構いませんが、これにより書く内容や使いたい表現が生徒の頭の中で具体的になります。
例えば、トピックが”pet”であれば、”take care of” “feed” “walk one’s dog”などそのトピック特有の表現を事前にシェアしておくことで、生徒は日記を書く際に新しい表現を実際に使ってみることができます。
不自然な表現を未然に防ぐことにもなります。
英作文指導法(2)英検のエッセイを使う
英語検定を受験する希望はなくても、英検のエッセイを書くことは、語彙を増やし英文の構成に慣れる上で大変有効です。
ご存知の通り、英検では各級で書くべきテーマ、構成、単語数が異なります。
そのため、生徒のレベルに応じて練習がしやすいため指導に向いています。
以下は実際に生徒が書いた英文を添削した例ですが、指導は口頭で行っています。
エッセイを書かせるときには下記の点に注意しましょう。
英文の構成に気をつける
英文を書くときには、introduction/body/conclusionの3つのパートを意識させます。
また、パラグラフを使うレベルになれば、ひとつのパラグラフにつき一つのアイデア・メッセージで書くことに気をつけさせます。
ひとつの文にあれこれ盛り込むのも好ましくありません。
日本語の文章ではひとつの段落、ひとつの文に多くのことが盛り込まれることがありますが、英文では好ましくないことに気をつけてもらいます。
接続詞や定番表現を紹介する
and/because/also/but/however/althoughなどレベルに合わせた接続詞を意識して指導します。
また、This is the reason why I think …やthe reasons stated aboveといった定番表現もレベルに応じて使うよう指導します。
文に幅広いニュアンスを持たせるためには、助動詞を積極的に使ってもらいましょう。
手本パターンを決めつつ、オリジナル文を作る
英文エッセイにはパターンがありますので、上記のような項目をマスターしてもらうために、先生がお手本となるエッセイを先に生徒に見てもらっておくのはよい方法です。
モデルエッセイの中で「ここは絶対使えるようになりたい」という表現はハイライトで示し、生徒にも同じ表現を使ってもらうとともに、「ここは生徒のオリジナル文」という箇所を2か所ほど設けて課題にすることで、慣れていない生徒にも書く自信をつけてもらうことが出来ます。
先生の添削時間を削減することにもつながり一石二鳥です。
(パターン例)
I think fewer people will choose to smoke in the future.
First, _________________. For example, ______________.
Second, _________________. Also, _________________.
These are the reasons why I think fewer people will be interested in smoking in the future.
上記のパターン例であれば下線部に生徒のオリジナル文を入れてもらうわけですが、ここでもブレインストーミングが理想的です。
ここに入る可能性がある文をまずは生徒同士、または先生と一緒に複数考えていきます。
そうすることでアイデアが豊富になりますし、自分だけでは書けなかった表現を知ることもできます。
書き手の責任があることを意識させる
英文では「伝わるかどうか」は書き手の責任です。
内容が良くても伝わらなければ意味はないことを念頭に、冗長な表現、回りくどい言い方、英語らしくない言い方などがあれば他の表現に替えるよう指導します。
単語数を稼ぐためにcanをbe able toにする、日本語の発想で受動態を多く使うなどのケースを散見しますが、生徒にはなるべくシンプルで誤解を招かない書き方を勧めます。
日記と英検エッセイを使った英作文指導の方法をご紹介しました。
最後に、英作文指導の注意点や工夫点をご紹介します。
英作文指導の工夫点:パラフレージングをさせる
ビギナーや子どもたちの英作文のなかには「日本語の文をそのまま英文にした」英文をしばしば見かけます。
例えば”Curry and rice like many children”はその典型です。
生徒の頭の中には「カレーはたくさんの子どもが好きだ」という文が浮かんでいるため、そのまま英語に置き換えたのでしょう。
そんな時、私は「主語はどれ?」と聞くことから始めています。
ここで正しい主語に気がつけば、英語に直しやすい文に言い換え(パラフレーズ)をしてもらいます。
「たくさんの子どもはカレーライスが好きだ」とするとうまくいきますね。
実際には日本語で「たくさんの子どもはカレーライスが好きだ」という人はいません。
日本語としては不自然ですが、この言い方こそが英語らしいのです。
以下の例では主語がなく、日本語の発想で書く癖が見られます。
こちらのように添削しながら生徒に指導しました。
受験英語の和文英訳の影響からか、日本語文を逐語的に英語に訳せないと、負けたような、ずるいことをしたような心理に陥る生徒もいます。
例えば「子どもにスマホを与えるなんて、猫に小判だ」という文があるとします。
それをそのまま英語にして、果たして外国人に通じる英文が出来るでしょうか。
このような場合には「猫に小判」をtoo expensiveと言い換えても全然問題はありません。
英文は「伝える」ために書いていることを確認し、外国人に自分の意見が伝わる書き方をすることが大切だというマインドセットを持っていただきます。
英作文指導の注意点:冠詞や前置詞を意識してもらう
英会話では細かいところが間違っていてもなんとかなりますが、英作文はごまかしがききません。
そのため、英作文は冠詞や前置詞の役割を認識してもらうよい機会と言えます。
冠詞も前置詞も小さな単位ですので学習者は軽視しがちですが、イラストなどで視覚的にその役割を伝えると興味を持って学習できます。
コアイメージ、レキシカルグラマーなどの用語で紹介されている図を活用するとよいでしょう。
英作文指導の工夫点:英作文は英借文であることを伝える
よい英文を読んでいないと、よい英文は書けません。
あるトピックについて英文を書く際にはネット検索し、どんどん関連する表現を使わせましょう。
テキストに出ているような文章ではなく、世の中には様々なスタイルの英文があると知ってもらうよい機会にもなります。
その中から自分の書いているものにふさわしい文章をまねるようアドバイスします。
借文も、何度も書けば自分の血となり肉となります。
英作文指導の注意点:評価基準を設ける
成績をつける必要がないレッスンでも、先生の中に英作文の評価基準を持っておくことは必要です。
生徒の努力を適切に認めたり、アドバイスしたりができるからです。
私の場合は「語彙が目標とするレベルか、バリエーションを持たせているか」「文法」「英文の構成」「論理の一貫性」を意識して添削しています。
生徒の現状を客観的に把握することができます。
英作文指導の工夫点:書くだけで終わらせない
せっかく書いて添削も終わった英作文をそのままで終わらせないために、以下のような発展活動をしてみましょう。
1.暗記してもう一度書く。
2.一文でもいいので、新しい表現や大切な構造が含まれる文を暗唱する。
3.書いた文をもとにスピーチをする。
英作文指導法~おわりに~英作文はエキサイティング
生徒にとって英語で自由に自分の考えをかけることは究極のカッコよさです。
また、書くことは話すことにもつながります。
ぜひ英作文学習を積極的に取り入れて、生徒のスキルアップを図りましょう。