中高生から大人まで!SDGsを英語指導に取り入れる5ステップ
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英語学習が中級レベルに達し、高校英語の文法がかなり理解できている段階にくると、さらなるレベルアップが難しく感じることがあります。
日常会話や日記などの「身の回りの英語」から脱し、世の中で起きていることについて意見を持ち、発信することを目標にした学習は学習者の自信につながります。
そこで、すっかりおなじみになったSDGsを題材として英語レッスンを組み立てる5ステップをご紹介します。
中高生から大人のレッスンにまで応用が可能です。
なぜ、SDGsが英語学習に適しているの?
SDGsとは?
日本では子どもから大人まですっかり浸透した感があるSDGs。
企業のコマーシャルにも登場しますので、カラフルなアイコンを目にした方は多いと思います。
SDGsはSustainable Development Goalsの略称です。
外務省のホームページによると「2015年の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」を指し、17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。
SDGsが英語学習に適している理由
SDGs学習は、地球規模で起きている問題について学び、考えられることが最大のメリットです。
語学を学ぶ人というのは本来、海外文化や国際情勢に興味があると思いがちですが、実はそうでもありません。
小学校で英語が教科となり、手軽にオンラインで学べるようになった現代では、ともすれば英語は進学や就職のための道具であり、英検やTOEICでハイスコアを出すための自己実現のツールのようになりがちです。
中高生とレッスンで話していると、自分を取り巻く社会の問題に驚くほど目を向けていない子どもたちがいます。
ですが、貧困や人権、環境の問題はもはやよその国の話ではありません。
例えば日本では子どもの貧困率は年々上昇しており、現在およそ7人に1人が貧困の状態にあるといわれています。
ところが、民間の英会話教室に通える子どもたちの家庭は経済的に安定しているため、困難をリアルに感じる機会はありません。
そのため、英語を通じて子どもたちを次世代のリーダーに育てるかどうかは先生にかかっているといえます。
また、日本や世界で起きている問題について知っていると、外国の人々と話をする際の共通の話題が増えます。
日本では当たり前でも外国では違うため、話がかみ合わなかったという経験はありませんか。
ずいぶん前のことですが、筆者は手洗いの習慣がない国があることにひどく驚いたことがありました。
では、なぜ手を洗う習慣がないのでしょう?
理由はそもそも、水道の設備がないからです。
こうした前提条件を知らければ、「日本人は清潔好きだけれど、外国人は衛生状態に無頓着」といった誤った解釈をしてしまいます。
これでは他国の人々と仲良くするのは難しいでしょう。
ちなみにこの問題は、SDGsのゴールのひとつ「安全な水とトイレを世界中に」にあたります。
SDGsに絡めて学ぶことで「視野を広げる」ことができます。
SDGsを英語レッスンに取り入れるステップ1:教材・題材選び
SDGsには17のゴール・169のターゲットがあります。
そのゴールやターゲットをテーマとして、英語レッスンに取り入れてみましょう。
一つ一つのゴールについては、生徒のレベル・関心にあった教材を準備します。
新聞記事を題材にしてもよいですが、先生の負担を考えると、市販の教材で生徒に各ゴールについての予備知識を得てもらうのがベストでしょう。
例えば、検索エンジンで「SDGs 英語学習」と入力すると、様々な英語教材を見つけることができます。
SDGsの17ゴールについて、テキストを読むだけではなく、音声や動画が用意されているものもありますし、学んだことに基づいて自分で調べ、英文にまとめる教材や、ディスカッション・スピーチにつなげられる工夫がある教材もあります。
SDGsを英語レッスンに取り入れるステップ2:キーワードの整理
SDGsを英語学習の題材にすると、アカデミックな英語へのステップアップがかなえられます。
環境問題、衛生、教育、保護…
こうした単語は小学生高学年になると意味がわかり、学校の学習活動でも頻繁に使われます。
日本語で日常的に使われている単語は、英語でもぜひ使えるようになりたいですね。
ただ、この手の英単語は初めて聞くと音節が複数で、長い単語が多く、アレルギーを起こす生徒もいます。
なかなか聞いた通り発音ができない、という生徒も出てくるでしょう。
レッスンの中では何度も聞き、何度も口にする工夫をしましょう。
クイズ形式でキーワード整理
例えば
環境は?the environment
衛生は?hygiene
保護は?protectionなど、そのレッスンで登場する単語をクイズ形式で練習するのもひとつです。
筆者も学生時代、どちらかというと技術的な単語は苦手でした。
その後、必要性から医療記事や海外支援に関する報告書等を翻訳していると、education(教育)やmedication (薬剤、治療) はもちろんのこと、abortion (中絶) hygiene problems (衛生問題)vocational training (職業訓練) early marriage (若すぎる結婚)等、日常会話であまり出てこなかった表現に何度も出会いました。
その結果、今ではなぜ、それらの単語が難しいと感じたのか不思議に感じます。
こうした単語は私たちの身近な問題を語るにおいて必要不可欠です。
語彙力が上がることで、外国人の友人とも実のある話ができるという自信につながりました。
ブレインストーミングでキーワード整理
難しめの単語をレッスンで導入するもう一つの方法はブレインストーミングです。
ひとつのテーマに沿って語彙を増やしていけるので、学び方が有機的になります。
例えば、ゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(affordable and clean energy)。
エネルギー問題を語るうえで必要なキーワードを生徒に挙げてもらいます。
英語でも日本語でも構いませんが、講師が目の前でホワイトボードなどに書きながら随時、補足していくとよいでしょう。
皆さんなら、どのようなキーワードが思い浮かびますか?
alternative energy / renewable energy / nuclear power / generation / energy sources / solar batter / electric cars / global warming / energy policy / carbon dioxide 等々、何人かで考えれば面白いものが登場するかもしれませんね。
SDGsを英語レッスンに取り入れるステップ3:リサーチ
キーワードを整理し、レッスンで扱うゴールについての基礎知識が身についたら、自分の国・地域での取り組みについて調べます。
生徒にはインターネットを活用してもらいましょう。
日本語の記事を検索して構いませんが、よく使われる定番の英語表現も確認してもらうため、英語の記事も調べます。
どこまで調べられるかは生徒の英語力や年齢にもよりますが、調べすぎないようには気をつけます。
レッスンの中では「調べる時間は10分」など目安を示します。
目的はあくまでも、「英語で表現する」ことにあるからです。
SDGsを英語レッスンに取り入れるステップ4:意見をまとめる
調べたことをもとに、「何が問題点なのか」「その解決策としてどのような計画があるか」「自分はそれについてどう思うか、自分だったらどのようなことに取り組めるか」などを英文でまとめます。
英文にまとめる際には「文法ミスの問題」が生じます。
先生はそのレッスンで積極的に使ってほしい構文やフレーズを先に提示しておきましょう。
構文が大きく崩れていなければ、少々文法ミスがあっても伝えることができるからです。
書くボリュームは生徒のレベルやレッスン構成によって異なるでしょう。
200字で書くことを目標にするのか、20分以内で書くことを目標にするのか。
または、仕上げとしてスピーチをするのに適切な文字数を提示するのもよいと思います。
SDGsを英語レッスンに取り入れるステップ5:スピーチ
この学習の仕上げは「スピーチ」です。
2分程度なら気軽に継続できるのではないかと思います。
プライベートレッスンの場合は生徒のスピーチを録画し、自分で確認してもらいます。
自分のスピーキングを客観的に見ると改善点が明確になります。
ここで、英語らしいイントネーション、発音、声の質、表情やジェスチャーなどに着目してもらうとよいですね。
日本人は日常生活の中で通常、あまり社会的な問題を話題にしません。
また、そうした問題について意見を述べることにも慣れていません。
英語圏の人々は一般に自分の意見とその理由を述べるようしつけられると聞きます。
日本人は、むしろ黙って素直に言うことを聞くよう育てられがちですので、英語は話せても内容のある話をするのは苦手、という声も聞かれます。
ただ、面白いことに、普段は控えめにしているけれども、英語では表現力豊かに「堂々と意見を述べる自分」になり切ることを楽しめる人もいます。
英語で「いつもと違う自分」になることが出来るのです!
ここはぜひ、大人の生徒にも張り切っていただきたいと思います。
英語でSDGsを学び、よりより世界へ~視野を広げる
以上、中高生から大人向け英語レッスンでSDGsを取り入れる5ステップをご紹介しました。
英語を学ぶ目的は年齢やその人の置かれた状況によって様々ですが、その究極の目的は、「相手の言い分を聞き、こちらの言い分をわかってもらう」ことに尽きるのではないでしょうか。
通訳に頼ることもできれば、機械翻訳に頼ることもできる現在、あえて外国語を学ぶのは、「通じればよい」という利便性を超えたコミュニケーションを求めているからだと思います。
講師と生徒の皆さんが地球の一員として楽しく学びを深めることを願っています。