All Englishでの英会話指導~問題点と工夫点

All Englishでの英会話指導~問題点と工夫点

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「中学校や高校での英語授業が、オールイングリッシュになる」

と話題になったことは、まだ記憶に新しいかもしれません。

学習指導要領で「授業は英語で行うことを基本とする」と明記されたことから、いろんな議論が出ました。

民間の英会話の先生にとって、オールイングリッシュは何も新しいことではなく、むしろ当たり前ととらえている方がほとんどでしょう。

しかし、生徒のレベルやクラスの雰囲気によっては、難しい問題が生じるのもオールイングリッシュ授業です。

オールイングリッシュ授業が抱える問題

「オールイングリッシュ」と聞くと、どのようなレッスン風景を思い浮かべますか。
先生が英語で話していて、生徒が聞いたり答えたりしている情景でしょうか。
生徒同士がペアで、英語によるやり取りをしている様子を思い浮かべる方もいるかもしれません。

ここで、ある疑問が生じます。

先生が英語で話しても、生徒が理解できていなかったらどうだろう?
先生が英語で質問しても、生徒が答え方に困ったらどうだろう?
生徒同士で練習させると、途中から日本語のおしゃべりの時間にならないだろうか?

どれもありそうなシチュエーションですね。

オールイングリッシュ授業の目的

生徒が子どもやビギナーの場合、オールイングリッシュにはどのような目的があるのでしょうか。

(1) 英語だけである程度の時間を過ごすことに慣れる
(2) リスニングの力を鍛える
(3) 状況に応じた英語表現が学べる
(4) 使いたい表現を自分から使ってみることができる

こうした目的を達成するために、先生はただペラペラ話すのではなく、目的に合った表現を注意深く使う必要があります。

生徒の英語習得を促すために使う英語を、教室英語やクラスルーム・イングリッシュと呼びます。
もちろん、少人数のグループレッスンやプライベートレッスンでも使えます。

Teacher Talkの種類

教室で先生が使う英語はTeacher Talkと呼ばれ、以下のようなものが考えられます。
自分がよく使う表現、あまり使わなかった表現などを分析することで、自分のTeacher Talkをレベルアップすることができます。
それは生徒のレベルアップにつながります。

(1) 指示 (例:Listen to the audio.)

(2) 説明 (例:I’ll pass out some cards.)

(3) 質問 (例:Who wants to try?)

(4) フィードバック(例:It’s not “lead” but “read”.)

(5) ほめる (例:You wrote neatly.)

(6) 励ます (例:Please take your time.)

All English

教室英語はステップを踏んで

効果的に英語だけでレッスンを行うためには、ステップを踏む必要があります。

例えば、小学生低学年のように英語学習を初めて間もない生徒の場合には、英語による指示だけではなく、言葉によらない、ノンバーバルな要素が必要となってきます。

長く英語から離れていた大人のビギナーも同様です。
ノンバーバルと言うと、以下のような方法が考えられます。

(1) 実物を見せる

(2) 絵や図を描いて示す

(3) ジェスチャーで表現する

(4) 表情や声の調子で伝える

(5) やってみせる

英会話レッスンでは、例えばカードを使うゲームなど、やり方を説明する場面が出てきます。

ゲームのやり方を全部英語で説明するとどうなるでしょうか?
生徒は理解できないかもしれませんし、先生も大変です。

しかし、生徒の前で実際にやってみせれば、理解も簡単です。
“Please watch me.”と言って話しながら目の前でやって見せて、“Like this(こんなふうにするんですよ).”と伝えれば非常にわかりやすいですね。

意外なのですが、経験年数が長い英会話の先生でも、言葉だけで説明しようとする先生を時々見かけます。
頭ではわかっていても「やってみせる」方法は、先生側の心がけや努力が必要なのです。

ただし、いつまでも簡単な英語、ノンバーバルを駆使してレッスン、では生徒は成長しません。
生徒の学習が進むにつれて少しずつ、ノンバーバルの要素は減らしていく工夫が必要です。

有効なパラフレージング

同時に、先生が話した英語を理解できないときは、別の表現に言い換える「パラフレージング」がとても有効です。
簡単な例でいえば、”Let’s switch the roles”と言っても生徒が動けない場合、”It’s your turn”と声をかければ生徒は何をするべきかがわかります。

”difficult”の意味が分からなければ”It’s not easy. It’s hard.”などと反意語を使って伝えます。

パラフレージングをしてくれる先生であれば、生徒も安心して、「わからなくても理解しよう」と英語だけで頑張ることができます。

教室英語は同じ表現で

同じ指示内容なのに、先生がレッスンのたびに違う表現を使っていると、生徒は混乱します。
また、指示で使われる表現を覚えることにつながりません。

例えば、”How are you?”を”What’s up?”や”How are you doing?”等、同じ時期にいろんな言い方で問いかけるのは英語を学び始めた生徒には好ましくありません。
バリエーションをつけるのは、生徒の段階を見ながらになります。
先生が話す英語にはすべて、意味があるのです。

教室では”Open your textbook to page…/Please come to the front. / Please watch me. / Please make pairs. “など指示語が多く使われます。
状況に応じて同じ表現を用いることで、生徒もその表現が使えるようになりますし、スムーズにレッスンが進みます。

どのような表現を使うかについては、様々な書籍が出ていますのでぜひ1冊は手元に置いておくことをお勧めします。

例:
『教室英語』(株式会社mpi松香フォニックス)
『Classroom English (Oxford Basics)』(Oxford University Press)

教室英語は言語習得に有効

英語の習得を促す教室英語では、生徒が理解できる表現にプラスアルファがある表現を使うことが望ましいとされています。
第2言語習得理論において、Krashenによるインプット仮説で知られる「i+1」理論によるものです。
生徒の既習事項を把握して、同じ表現だけれど単語を言い換えたり、習得してほしい表現を足していくことで生徒は無理なく英語環境の中で英語を学んでいくことが出来ます。

例えば、寒いときにいつも”It’s cold. “と言っていた段階から”It’s very cold. / It’s freezing cold. “などと言うことで、生徒にも使ってみることを促すことが出来ます。

センテンスで話す

また、先生は必ずセンテンスで話すようにします。
子どもだから、ビギナーだから、と言って「単語レベル」のやり取りをOKにしていると、生徒はそこからなかなか抜け出せなくなります。
センテンスで話すのは国際マナー。
ネイティブスピーカーは子どもに対してもセンテンスで話をします。
先生の話し方から学んでもらいましょう。

ネイティブの先生がクラスで使用する表現はぜひ取り入れていきたいものです。
ともすれば、日本の先生は”Don’t speak now.”” Please come to the front.” 等、やや命令口調の英語を話す傾向があると海外の方に指摘されたことがあります。

例えば”Could you~, please?”のように、相手と気持ちよくコミュニケーションが取れる表現を使っていきたいですね。
そうすると、生徒もそれが当たりまえになりますから、自分から発話する際にもスムーズです。

All Englishの環境で生徒の発話を促すために

幼児や小学校低学年の子どもたちが初めて英会話レッスンを受けるときには、日本語のない環境を不安に感じるかもしれません。

例えば、クラスの最初に

「どうしてレッスン中は英語でお話するのかな?
みんな、スイミングスクールでは何をする?
泳ぐよね。それと一緒だよ。
レッスンの間は英語で話そう」

と伝えて一緒に10まで数を数え、Only Englishの時間に入るなど、みんなでできる「儀式」を決めておくとけじめがついてよいでしょう。

大人のビギナークラスでも、オンリーイングリッシュの理由を最初のレッスンで共有することは重要です。
さすがに、10まで数える必要はないですが・・・。

日本語を発話させないための工夫

高学年~大人の生徒のレッスンでは、日本語がしょっちゅう飛び出す生徒がいることがあります。
おはじきなどを数個各自に渡しておいて「日本語を話したら、持ち分から一つとる」というルールを決めると、努力が目に見えます。
手元にたくさん残っていれば、あまり日本語を話さないでその時間を過ごせたということになります。

また、生徒からの発話を促したい場合は、その時期に学習中の表現を使うことを目標にしてボードに書いたり、ポスターにしたりしてレッスン中に生徒が見えるようにしておきます。
そのうえで、それらの表現が言えれば、おはじきをその生徒の机に置く、などとするとよいでしょう。
少しゲーム感覚で努力が目に見える形で現れますので、楽しく頑張ることができます。

All English

All Englishでの英会話指導まとめ

日々のレッスンの中で、脇役のように見えて実は大きな役割を果たしている教室英語。
まずは自分が普段話しているTeacher Talkを分析することから始めてみてはいかがでしょう。
レッスンに自信が生まれ、生徒が生き生きすること間違いなしです。

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